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横浜地方裁判所 平成3年(行ウ)26号 判決

原告

有限会社シービーエス

右代表者代表取締役

志村昭太郎

右訴訟代理人弁護士

須賀正和

被告

藤沢市固定資産評価審査委員会

右代表者委員長

秋元保

右指定代理人

瀬高真成

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  (評価基準及び画地計算法について)

1  評価基準は、固定資産の評価の適正化と均衡化を確保するため自治大臣により判定、告示されたもの(地方税法三八八条一項)であり、市町村長が固定資産の価格を決定するには評価基準によらなければならない(同法四〇三条一項)。

2  評価基準によれば、宅地の評価は、各筆の宅地について評点数を付設し、当該評点数を評点一点当たりの価額に乗じて各筆の宅地の価額を求める方法によるとされ、本件のように主として市街地的形態を形成する地域における宅地については「市街地宅地評価法」によるものとされている。

次に、「市街地宅地評価法」による宅地の評点数の付設については、市町村の宅地を商業地区、住宅地区、工業地区、特殊地区等に区分し、当該各地区について、その状況が相当に相違する地域ごとに、その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選定し、右標準宅地について、売買実例価額から評定する適正な時価を求め、これに基づいて当該標準宅地の沿接する主要な街路について路線価を付設し、これに比準して主要な街路以外の街路の路線価を付設し、さらに右路線価を基礎として、「画地計算法」を適用して、各筆の宅地の評点数を付設するものとされている。

3  そして、三方路線地とは、三つの異なる系統の路線が形成する二つの交差する角に位置し、当該路線のいずれにも接する画地をいうものとされ、その評点数については、側方路線影響加算法(正面と側方に路線がある画地(角地)の価額は、路線価の低い法の路線である側方路線の影響により、路線価の高い方の路線である正面路線のみに接する画地の価額よりも高くなるので、これを一定の加算率で補正する方法)及び二方路線影響加算法(正面と裏面に路線がある画地(二方路線地)の価額は、路線価の低い方の路線である裏路線の影響により正面路線のみに接する画地の価額よりも高くなるので、これを一定の加算率で補正する方法)を併用して、当該画地の単位地積当たりの評点数を求め、これに当該画地の地積を乗じてその評点数を求めることとされている。なお、路線(道路)とは、道路法三条に規定する高速自動車道、一般国道、都道府県道、市町村道及び地方税法三四八条二項五号の規定による「公共の用に供する道路」並びに通路(幅員二メートル未満の行止り路又は通り抜けはできるが比較的曲折が多い幅員二メートル未満の私道)以外の私道をいうものである。

4  したがって、本件土地が三方路線地であるか否かについては、前記評価基準の趣旨から、本件土地の北間口が、東間口側の藤沢駅川名線及び西間口側の南口ファミリー通りとは異なった路線に接しているかといえるか、またその結果角地又は二方路線地よりもその価額が高くなるかを、本件土地の形状及び立地条件(利用価値、利用状況及び周辺の道路状況等)等から客観的、合理的に判断することとなる。

二  (本件土地の形状、立地条件等)

1  本件土地北間口は、間口五・〇〇メートルで、歩道に接し、同じ歩道敷にある歩道橋施設との間の幅員は三・八〇メートルあり、これを挟んで駅前広場に面している。右歩道橋施設は駅前広場を取り囲む一連の歩道橋施設の一部を構成しており、北間口から藤沢駅方向への前面は右歩道橋施設によって遮られている状況にある。東間口は、間口が六・九六メートルあり、駅前広場に通じる藤沢駅川名線(全幅一八メートル、本件土地側の歩道幅三・九六メートル)に接している、西間口は、間口が六・九七メートルあり、駅前広場に通じる南口ファミリー通り(全幅一一メートル、本件土地側の歩道幅二・二五メートル)に接している。北間口側には現在自動販売機が数台設置され、建物の出入口としては利用されていないが、東間口側及び西間口側は建物の出入口として利用されている。〔証拠略〕

駅前広場、藤沢駅川名線及び南口ファミリー通りはいずれも公衆用道路として市の所有地となっている。〔証拠略〕

2  東間口前及び西間口前には、各間口に続く歩道に続いて、それぞれ藤沢駅川名線及び南口ファミリー通りの車道を横断する横断歩道が設けられ、各対面の歩道に通じている。駅前広場の中心部分は車道であり、それを取り囲むような形で周辺部分に歩道が続いており、本件土地の各間口前の歩道もその一部となっている。

東間口側の藤沢駅川名線の横断歩道付近には信号機が設置され、同横断歩道を挟んで車両停止線があり、藤沢駅川名線の車道部分は駅前広場に出入する車両の双方通行となっている。一方、西間口側の南口ファミリー通りの横断歩道付近には信号機は設置されておらず、車道部分は駅前広場に向かう車両のみが通行できる一方通行の道路となっており、駅前広場に向かって横断歩道の手前及び横断歩道を越えて駅前広場の車道部分との境に各車両停止線がある。

また、歩行者は本件土地から直接藤沢駅に行くことはできず、歩道部分を迂回するか、北間口前の歩道橋を利用して行くようになっている。〔証拠略〕

三  (本件土地の三方路線地該当性)

前記争いのない事実及び右二の認定事実によれば、北間口の長さは、東間口及び西間口と比較して特に短いとはいえず、現在原告において北間口を出入口としては利用していないが、出入口としての利用が十分可能であること、また北間口側の歩道の幅員と東間口側の歩道の幅員がほとんど同じであり、西間口側の歩道の幅員よりもいずれも一・五メートル以上広く、歩行者の通行には十分な広さを有していること、北間口側の歩道は、駅前広場を取り囲む一連の歩道の一部となっており、いわば駅前広場における周辺街路の一部を構成し、しかも藤沢駅川名線及び南口ファミリー通りの車道が、いずれも駅前広場の街路に合流していることが認められるから、北間口前の歩道部分及び車道部分が形成する街路部分は、藤沢駅川名線と南口ファミリー通りの単なる折り返し部分ではなく、駅前広場周辺街路の一部であって、藤沢駅川名線及び南口ファミリー通りとは異なる路線であり、その形状、利用可能状況等からすると、角地又は二方路線地よりも価額が高くなるものと認めることができる。したがって、本件土地は、評価基準にいう、三つの異なる系統の路線が形成する二つの交差する角に位置し、当該路線のいずれにも接している画地、すなわち三方路線地であると認められる(なお、相続税財産評価基準の路線価においても、本件土地は三方路線地とされている。〔証拠略〕)。

原告は、評価に当たっては個々の土地の立地条件、形状、利用状況等の特殊事情を斟酌して決定すべきであると主張し、本件土地の場合に、本件土地上の建物の北間口側に出入口のないこと及び歩道橋施設があって北間口側の前面が遮蔽されていることを特殊事情として挙げている。しかし、評価基準及びその画地計算法は、固定資産の評価の適正化、均等化を確保する目的で制定されたものであり、その客観的な評価が求められるものであるから、特殊事情がある場合にもそれが客観的なものと認められる場合にのみ考慮の対象とされるべきであることは当然である。ところで、土地の立地条件及び形状については客観的な評価が可能であるが、土地の個別的、具体的な利用状況については、当該土地の利用形態が専らその土地の所有者等の主観に関わるものであるから、これを特殊事情として考慮の対象とすることはできない。これを本件についてみると、本件土地上の建物の構造が原告主張のような構造であるとしても、それは本件土地の利用形態の一方法としてそのような建物を建築したというだけであって、これはいわば主観的なものでしかなく、これをもって考慮すべき特殊事情とすることはできない。また、歩道橋施設についても、これによって本件土地の北間口側から駅前広場に向かっての前面が遮られていることは前記認定事実のとおりであるが、北間口側の歩道が駅前広場を取り囲む一連の歩道の一部として十分その効用を果たしており、本件土地が駅前商業地域の中心地にあり、しかも歩道橋施設との間の幅員(三・八〇メートル)からすれば、これによって人の流れが阻害されているとは認められないから、右歩道橋施設の存在も特殊事情として考慮することはできない。

次に、原告は北間口が土地区画整理事業による角切部分であるから、これを独立に評価すべきでなく、仮に評価するにしても正面路線として計算することは不自然である旨主張する。しかしながら、北間口が角切部分であるにしても、土地の評価は、土地の形状及び立地条件等によって決まるものであるから、角切部分であること自体が土地の評価に影響を及ぼすものではない。また、北間口は東間口と路線価が同一であるところ〔証拠略〕、間口幅は東間口の方が広いことは前記認定事実より明らかであるが、本件土地が、藤沢駅及び駅前広場を中心として放射状に区画整理された土地の一角を占め、北間口が駅に向かって正面に位置することを考えると、北間口側を正面路線とすることは不自然、不合理とまではいえない。

さらに、原告は公図(別紙図面一)を根拠に、北間口が直接接しているのは藤沢駅川名線である旨主張している。確かに公図上は、藤沢駅川名線の四三番の土地がかぎ状になって北間口に接していることになっているが、公図は土地の区画及び地番を明らかにするための地図、すなわち筆界を示すものにすぎないものであり、評価基準における路線を区別する目的で作成されたものではないから、公図の表示をもって路線の異同を判断することはできない。

したがって、原告の主張はいずれも理由がないことになる。

四  (結論)

以上のとおり、本件土地は評価基準における三方路線地と認定できるものであるから、被告が本件土地を三方路線地と判定し、評価基準の定める画地計算法に従って別紙評点表のとおり本件土地の評点数を算出のうえ、原告の審査申出を棄却した本件処分は適法である。

(裁判長裁判官 尾方滋 裁判官 秋武憲一 藤原道子)

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